
この度、水戸忠交易では、新里明士の個展を開催する運びとなりました。
若き頃より高い評価を得て、常に世代と時代を牽引してきた存在です。
端正で静謐な作品は、まさに彼の感性と知性を体現するものです。一方で、あまりにも鮮やかな作品へのアプローチは、それまでの作家としての苦悩や努力をも覆い隠してしまうかのようでもありました。
今回の作品もまた、軽やかで色彩豊かな仕上がりとなっております。そこに至るまでには多くの苦労があったはずですが、それを表に出すことはありません。むしろ作家の言葉からは、その過程すら楽しんでいるかのような印象さえ受けます。
本展では、その楽しくも困難な歩みがひとつの結実を迎え、皆様に初めてご覧いただく機会となりました。
ご高覧賜りましたら幸甚に存じます。
水戸忠交易
林大介
2011年から一年程、アメリカのボストンで制作していたことがある。滞在していた始めのうちは、日本で作っていた作風をアメリカでも発展させようと躍起になっていた。当然、環境・材料が異なっているので上手くいく訳もなく、アメリカの滞在後半には現地でしか出来ないものを作ろうと趣旨を変えた制作をしていた。作風を捨てるというのは大袈裟に言えばアイデンティティ・クライシスのような状態であり不安も大きい。だが私は環境と素材に委ねて「もの」が捻り出される状態も結構好みで、アメリカ以降にも、信楽やファエンツァなどで、この作業を度々繰り返している。陶産地で長年培われてきたルールやノウハウに対して、自分がどのようにリアクション出来るかを楽しんでいるのかもしれない。
今回発表する「以手碗」のシリーズは、イタリアのファエンツァで焼いたマヨリカ焼の茶碗である。
一般的なマヨリカ焼は釉薬を均一に総掛けした軟陶である。自分の場合はテラコッタ土を玉作りで捻り、釉薬を流し掛けなどでムラを作り、あえて土見せを残して焼いている。自分が感じたマヨリカの魅力を少しでも作品で表現することが出来れば本望だ。
ファエンツァでの制作はまだ慣れないこともあってアクシデントも少なくない。しかしこの美しい陶の都に今後も繁く通い、自分の輪郭を探す制作を続けていこうと考えている。
新里明士
会期:2026年4月24日 - 5月17日 11:00-18:00
会場:水戸忠交易 東京都千代田区紀尾井町4 ホテルニューオータニロビー階
TEL 03-3239-0845
*作家在廊日: 4月24日